KOL(Key Opinion Leader)はどう選ぶ?医療・製薬業界における医師の選定基準とKOL戦略について解説

KOL(Key Opinion Leader)はどう選ぶ?医療・製薬業界における医師の選定基準とKOL戦略について解説

KOLとはKey Opinion Leader(キーオピニオンリーダー)の略語で、医療・製薬業界においては、特定の疾患領域で学術的・臨床的に大きな影響力を持つ医師や研究者のことをいいます。KOLの選定は薬剤の市場浸透を左右する重要なプロセスですが、医療用医薬品の市場ではステークホルダーが多岐に渡るためさまざまな観点からKOLターゲティングを考える必要があります。本記事では、医師の学術活動という観点から、医薬情報ネットの学会情報データベースを活用したKOL選定方法を紹介します。

KOLマッピング

KOLとは?

まず、KOLの基本的な意味と、医療・製薬業界においてKOLがどのような役割を果たしているのかを整理します。その上で、なぜKOL戦略が製薬マーケティングにおいて重要なのかを解説します。

KOLの意味と読み方

KOLとは「Key Opinion Leader(キーオピニオンリーダー)」の略称で、読み方は「ケーオーエル」です。これはもともと医療・製薬業界から生まれた概念です。直訳すると「重要な意見を持つリーダー」であり、「対象の疾患領域において学術的・臨床的に影響力を持つ権威ある医師・研究者」を指す用語として定着しています。

近年では、中国を中心としたSNSマーケティングの文脈でもKOLという用語が使われていますが、医療・製薬業界におけるKOLとは性質が異なるものです。本記事では、医療・製薬業界におけるKOLに焦点を当てて解説します。

医療・製薬業界におけるKOLの役割

KOLである医師は、学術的な影響力を基盤としながら、製薬企業のプロモーション活動やメディカル活動のさまざまな場面で重要な役割を担っています。

学術面においては、治療ガイドラインの策定委員として診療の方向性を左右する立場にあったり、主要な学会で演者や座長として登壇し最新の知見を他の医師に伝える役割を果たしたりします。また、臨床試験の主任研究者(PI)として新薬の開発に関与するケースも少なくありません。

製薬企業のプロモーション活動面での役割としては、講演会やセミナーでの演者・座長、製品または疾患啓発コンテンツの医学的監修などが挙げられます。KOLの見解は、臨床現場の医師が治療方針や薬剤選択を判断する際の重要な参考情報となります。

製薬企業のメディカル活動面での役割において、KOLは科学的・中立的な立場から医療現場の知見を共有し、エビデンス創出や適正使用の推進に貢献します。具体的には、主にメディカルアフェアーズ部門と協働し、アドバイザリーボードでの臨床的示唆の提供、リアルワールドデータやアンメットメディカルニーズに関する意見交換、研究計画への助言を行うことなどが挙げられます。

KOL戦略が製薬マーケティングで重要な理由

KOLが最新のエビデンスに基づいた適切な治療方針や関連情報を発信することは、臨床現場で働く多くの医師の治療判断に大きな影響を及ぼします。したがって、どの医師をKOLとして位置づけ、どのように関係を構築していくかは、薬剤の市場浸透と処方適正化の実現を左右する戦略的な意思決定といえるでしょう。

そのため、KOL選定を「何となく」で済ませてしまうと、その後のマーケティング施策全体の精度と効率に影響が出かねません。KOLの選定から関係構築・見直しまでを一貫した戦略として設計することが重要です。

KOLの判断基準を設けていますか?

KOL選定において、判断材料に「客観的データ」を含め、判断基準に「明確な基準」を設けることは、ターゲットの検証・見直しが簡易になり、漏れなく網羅的に選定できるといったメリットがあります。

一方、KOLの定義が明確にされないまま、MRからのアンケート結果、過去に経験のあるプロダクトマネージャーの意見でKOLを決定しているケースも見受けられます。もちろん、KOL選定に答えが明確にあるわけではないため、間違っているわけではありません。ですが、KOL選定のノウハウが特定の担当者に属人化していると、担当者が変わった際に「なぜこの医師がKOLなのか」「見直しは必要なのか」が分からなくなり、組織の課題に発展してしまうことも少なくありません。

こうした事態を防ぐためにも、マーケティングチーム内で客観的データを用いた明確な基準を設けることは、マーケティングの再現性を高め、PDCAサイクルを回していく上で非常に重要です。

KOL選定の目指すアプローチ

KOLの判断材料(データベース&選定指標)と選定フロー

KOLの判断基準を設けるための客観的データには、どのような種類のデータが考えられるでしょうか。下図に各種データソース、及び、各種データベースから抽出できる選定指標の一例を示します。

KOL選定のためのデータベース&選定指標


上記のデータソース以外からもKOL選定は可能です。また、対象の薬剤によって選定指標もデータソースも調整が必要です。データソースは多ければ多いほど精度が高まることもありますが、データ収集のコスト、集めたデータの集計・加工のコストも比例して増加します。そのため、最低限度のデータソースはどこまでなのかの見極めが必要です。判断のポイントは、ターゲット医師を漏れなく抽出できるかどうか。この観点からデータソースの範囲を決定します。

対象のデータソースが決まったら、各種のデータソースからどのような指標が定量化できるか確認していきます。例えば、学会情報データベースでは、「第一演者経験数」「座長経験数」「共同演者経験数」「企業セミナー経験数」などを指標として抽出することができます。この指標を用いてKOL選定を進めます。

医師の学術活動を可視化する学会情報・論文情報データベース

以降では、上記で紹介したデータソースのうち、学会情報データベースと論文情報データベースを例に、KOL選定の具体的なフローを3ステップで紹介していきます。

なお、学会情報データベースは国内外の学術大会における演題やプログラム情報をデータ化したもので、「誰が/どの施設で/何を/誰と」発表したかを時系列でたどれるのが特徴です。論文情報データベースは、日本人医師が日本語・英語で執筆した論文情報に特化し、論文タイトル、著者名、著者順、書誌事項などを網羅したデータソースです。

KOL選定フロー①各種データベースからキーワードで関連する人物を抽出する

対象のデータソースと選定指標が決まったら、データを抽出していきます。薬剤の「対象疾患」「生体分子名」「症状名」など、特定のキーワードを選び、各種データソースから抽出します。

例えば、

  • 学会情報データベースであれば、 特定キーワードが含まれる学会演題に関連した人物
  • 論文情報データベースであれば、 タイトルに特定キーワードが含まれる論文に関連した人物


このように、特定のキーワードに紐づく人物データを抽出することで、より精度の高いターゲットリストが作成でき、その中からKOLを選定することができます。

複数のデータソースからデータを抽出した場合には、それぞれ抽出したデータを突合します。人物の名前表記が日本語・アルファベットなどテキスト情報が異なるため、人的に確認を行う必要がありますが、同姓同名の人物を除くために必要な作業です。

データをランキング化するステップ

KOL選定フロー②人物単位でスコア化(スコアリング)する

判断要素となるデータを人物単位で抽出したら、マーケティングにおいて重要とするべき選定指標に重み付けを行い、スコア化していきます。指標をスコア化することで、ランキングが生成でき、用途に応じたKOLを選定する事が可能になります。以下に重み付けの例を示します。

人物単位のスコアリング例


どの指標を何%で重み付けするのかは、経験値で判断するしかなく、繰り返し見直すことで精度を高めていく必要があります。

なお、昨今は新薬がプライマリケア領域からスペシャリティ領域へシフトしている傾向に伴い、KOLの選定要素も学術実績を重視する方向に変化しています。論文の第一著者(first author)登場回数や最終著者( last author)登場回数、学会での座長経験数など、学術的な指標の比重を高めるケースが増えてきました。

スコアリングが完了したら、総合スコアに基づくランキングに加えて、学会役員やガイドライン委員であることを示すフラグ、卒業年から推定される経験年数、所属施設の都道府県情報などを付与します。こうすることで、さまざまな切り口でKOLを抽出できるリストが完成します。たとえば「学会発表数が急増している若手医師」に「ライジングスター」のフラグを付ければ、次世代のKOL候補の発掘にも活用可能です。

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どのくらいのKOL数をマーケティングチームはカバーすべきか

KOLをランキング化した後、どのくらいの人数をマーケティング活動でカバーすべきかという問題があります。薬剤のターゲット患者数や対象医師数に応じて大きく変動しますが、一般的には20〜30名、多くて40名程度をカバーする薬剤が多い傾向です。ただし、スペシャリティ領域では専門性が高度になるほど対象となる医師自体が限られるため、KOLが数名しか該当しないケースもあります。

KOL選定フロー③必要に応じてインタビュー・アンケートなどの定性調査を

KOLをスコアリングしランキング化できたことで、一定基準でKOLを選定する事が可能になります。ただし、上記の方法で算出したスコアはあくまで定量的な学術実績に基づくものであり、医師の診療方針や、他の医師への影響力の実態など、薬剤のマーケティングに影響を及ぼす定性的な情報は含まれていません。

そのようなKOLの思考回路、影響力などを、インタビューやアンケートなど実施して深掘りすることで、KOLの解像度を上げていく必要があります。すでに社内で保有する情報や予算に応じて、実施可否を判断するとよいでしょう。

最初からインタビューやアンケートを実施してしまうと、莫大な費用とリサーチ工数がかかってしまいます。そのため、KOLをランキング化しTOP20位までをリサーチ対象とするなど、対象の目星を付けてから定性調査を実施することを推奨します。

KOLマネジメントにおける医師の選定タイミングと継続的な見直しの重要性

KOLを選定するタイミングは、上市時、もしくはその前のプレマーケティング段階であることが多いかと思います。一度決めたKOLを長年変えないケースもありますが、薬剤によっては毎年定期的に見直しているマーケティングチームも少なくありません。定期的に見直すことで、領域内の動向を把握し、漏れなく必要な医師をフォローできるようになります。

また、部位を横断するような薬剤も多く存在します。そのため、対象疾患や部位別にKOLを整理し、複数の疾患・部位にまたがって専門性を持つ医師を重要なKOLとして選定するなど、薬剤の将来的な適応拡大も見据えた検討が求められます。

特に新規領域に参入する企業では、社内に疾患領域の知見が十分に蓄積されていないケースも多く、客観的データに基づく早期のKOL選定が効果的なスタートダッシュを切る上で欠かせません。承認前からターゲット医師の選定を進め、上市後すぐにメディカルアフェアーズ活動や情報提供活動を開始できる体制を整えておくのが理想的です。

そして定期的な見直しには、競合他社に先行して新たなKOLとの関係構築を進められるというメリットもあります。競合の多い領域では、影響力のある医師がすでに他社に囲い込まれているケースも少なくないため、早期の発掘と定期的な更新がKOL戦略上の差別化につながるでしょう。

KOL選定における客観的データ活用のすすめ

KOL選定は、学会情報や論文情報などの客観的データを活用し、明確なロジックでスコアリング・ランキング化することで、属人化しない再現性のあるプロセスへと変えることができます。選定の精度を高め、定期的に見直していくことが、中長期的なマーケティング成果につながるでしょう。

こうしたデータドリブンな選定は、属人的な判断に依存したままでは見落としてしまうKOLの発掘にとどまらず、施策設計やリソース配分の最適化にもつながります。また、選定根拠を明確にすることで、社内での合意形成が円滑になる点でも重要です。

KOLマッピング・医師分析のご相談は株式会社医薬情報ネットまでお問い合わせください。

https://service.pin-japan.com/lp/kolmapping/

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